就職・採用関係

就職・採用関係

シフトを減らされた

週4日勤務の約束で働き始めましたが、途中から「仕事が減ったから」という理由で週2日しかシフトに入れなくなりました。このような変更は認められるのでしょうか?

仕事が減った理由は様々なことが考えられますが、会社は合理的理由がない限り労働条件を一方的に不利益になるように変更できません。また会社は、会社都合による休業の場合には、「休業手当」を支払わなければならないことになっています。つまり単に「仕事が減ったから」という理由では、労働条件変更の合理的理由とは考えられませんので、あなたと会社との契約は週4日のままと考えられます。また、この理由による2日のシフト減は、会社責任による休業と考えられますので、会社はあなたに週2日分の6割以上の「休業手当」を支給しなければなりません。

 

まず入社時の労働条件を確認して下さい。 労働基準法では会社は、労働契約を結ぶ場合労働者に対して、賃金、労働時間等の労働条件の明示をしなければならないと定めています。特に労働時間等については、書面の交付をもって明示することとなっています。もし、書面の交付がない場合は、求人広告等を保管しておくようにしましょう。また、口頭での約束の内容をメモに取っておくようにしましょう。

 

次に シフト減については必ず理由を聞くようにしましょう。その理由をできたら書面にしてもらいましょう。書面にしてもらえなかったら、必ず自分のメモに残すようにしておきましょう。 今後の対応としては、シフト作成の段階で、会社に対して週4日勤務の契約であることを再確認し、勤務日の割り振りを週4日にしてもらうよう話し合いましょう。どうしても2日しかシフトが組めないと言われたら、会社都合の休業になることを確認し、休業手当の支給を求めましょう。他の人も同じようなシフト減になっていれば、一緒に会社と話をするようにしましょう。

身元保証人の損害賠償

子供は会社員ですが、先日、会社の備品を壊してしまいました。私は保証人になっており、会社から損害賠償を請求されてしまいました。 請求額すべてを払わなくてはならないのでしょうか?

原則としてあなたは、子供が会社に対して与えた損害をすべて賠償しなくてはなりませんが、「身元保証ニ関スル法律(以下、身元保証法)」により、責任の緩和がなされています。

 

身元保証契約とは、会社が採用した労働者の行為によって損害を与えた場合に、身元保証人がその損害を填補することを約束する契約です。損害額を決めるには、使用者の監督上の過失の有無、身元保証人が身元保証をしたときの事情、そのときの注意の程度、被用者の仕事の内容など、一切の事情が考慮されることになっています。

 

その賠償責任について争いが生じたときは、最終的に、裁判所で判断することになりますが、この場合、会社の損害賠償請求は、その監督に関する過失の程度などにより制限的に決定されています。判例では、「会社にも業務命令の徹底やチェック体制に不備があるとして、3割の過失を認め、また身元保証人の責任については、その業務の危険性に照らし、責任の重大性について十分説明しなかったとして、その賠償義務を損害額の4割としているもの」があります。

 

まず確認すべきことは、 
@身元保証契約の有効期間内での事故かどうか確認する。( 期間を定めない場合3年、最大5年。ただし5年毎の更新はできます。)
A会社が身元保証人へ任務や任地等の変更通知をしているか調べる。 (身元保証法第3条)
B賠償額があらかじめ定められたものかどうか確認する。

 

身元保証期間については、契約により自動更新条項が入っていることがありますが、これをそのまま有効と認めてしまうと、身元保証法が有効期間を制限しようとしたことが無意味になってしまいます。そこで判例は、具体的事情により結論は分かれていますが、こうした条項を容易に有効とは認めない立場にたっています。

 

また会社は、労働者の業務上の事故により、身元保証人に責任を生ずる恐れがあるときや本人の任務、任地を変更したときは、そのことを身元保証人に通知する義務があります。また身元保証人は、これらの事実を通知により知ったときは、身元保証契約を解除できることになっています(身元保証法第4条)。さらに、賠償額が労働契約であらかじめ定められているような場合、その賠償請求は無効とされます(労働基準法第16条・身元保証法第6条)。

 

今後の対応としては
@労働者が事故を起こしたときの状況(過失の有無・程度、会社の業務管理の状態)と損害額の算定資料を提示するよう求める。
A賠償額について専門機関の判断を求め比較する。

 

身元保証法第5条は「事故が発生した場合、身元保証人の損害賠償責任の有無とその金額について、裁判所は、使用者の監督責任、身元保証をするにいたった事由、労働者の任務、身上の変化、その他いっさいの事情を考慮して決定する」としていますので、使用者にも過失があったとして、賠償額は軽減されることがあります。

女性労働者の採用について

当社では、従業員を採用する予定ですが、この採用にあたって男性に限るとすることは問題ありますか。また男性、女性双方を採用する場合でも、男性30歳、女性25歳と年齢を制限することはできますか。

「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「男女雇用機会均等法」といいます。)では、募集および採用について「女性に対し男性と均等な機会を与えなければならない」としていますので、ご質問のような取扱いは原則として禁止されることになります。しかし特例として、女性労働者が男性労働者に比べて少ない部門における募集については、女性を有利に扱うことは男女雇用機会均等法上は問題ありません。

 

法の下の平等という原則とは裏腹に、雇用の面においては女性労働者が、仕事内容や昇進等で差別待遇を受けることが多くありました。そこで男女の雇用の面における均等な機会と待遇を推進するために、昭和61年に男女雇用機会均等法が制定されました。さらに平成11年に改正され、内容がより強化され女性が差別されることなく、働きやすい環境にしていくための措置が規定されました。男女雇用機会均等法では、労働者の募集および採用だけではなく、配置、昇進、教育訓練、福利厚生、定年、退職および解雇について、事業主に男女の均等な取り扱いをすることを義務づけています。

 

男女雇用機会均等法の規定をうけ厚生労働省が具体的な取り扱い指針を公表しましたが、募集および採用に関して、下記のような措置を禁止しています。

  • 女性であることを理由として、その対象から女性を排除すること
  • 男女ともに募集または採用の対象としているにもかかわらず、女性または男性についての募集または採用する人数を設定すること
  • 年齢、婚姻の有無、通勤の状況その他条件を付す場合において、女性に対して男性と異なる条件を付すこと
  • 求人の内容の説明など募集または採用にかかる情報の提供について、女性に対して男性と異なる取扱いをすること
  • 採用試験などについて、女性に対して男性と異なる取扱いをすること
  • 女性であることを理由として、その対象を女性のみとすること。

 

ただし、女性または男性のみに就かせる必要がある職業がありますが、このような場合には、均等取扱いの適用が除外されます。それには下記のようなものがあります。

  1. 芸術芸能の分野の表現の真実性等の要請から、男女一方の性に従事させることが必要である職業
  2. 防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職業
  3. 宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上により男女一方の性に従事させることが必要である職業
  4. 労基法の規定により、女性の労働が制限されている場合
  5. 風俗、習慣等の違いにより女性が能力を発揮しにくい海外での勤務、その他均等な機会を与えることが困難と認められる場合

したがって、ご質問にあるような男性または女性に限った募集または採用や、男女別の年齢制限は男女雇用機会均等法および指針に抵触することになり、禁止されることになります。

試用期間について

当社において3ヶ月の試用期間で採用しましたが、いましばらく様子をみて、正式採用しようと思います。問題はないでしょうか?

3ヶ月の試用期間を延長してさらに使用者の様子を見ることは、合理的な理由がある限り問題はありません。ただし、何度も期間を更新して試用期間が長期に及ぶと無効になる場合があります。また、試用期間が満了し正式採用をしない場合には、その旨を試用者に通知して下さい。

 

試用期間とは入社後、労働者を正社員として本採用するまでに、職業能力や企業適応性を見るために設けられた制度で、法的性格については、解約権を留保した期間の定めのない労働契約と解されています。 試用期間中の解雇や本採用の拒否は、この解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる場合にのみ許されます。

 

試用期間については、就業規則に、一定期間を試用期間とする旨を定めるとともに、「試用期間の終了時に社員として不適格と認めた時には本採用しない」との規定を定めておきます。

 

試用期間については判例では、採用の当初に労働者の適格性を判断する十分な資料を収集できないために、後日の調査や観察に基づく最終的な決定を留保する趣旨で、合理的な期間にわたり解約権を留保することは合理性を有し「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ」許されるとしています。

 

したがって企業側は、実際に働かせて従業員としての能力・適格性に欠ける場合には、解雇が認められますし、判例では、採用決定後の調査により判明した事情を理由として、本採用を拒否することも許されるとしています。また判断の妥当性については、通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められることになります。

 

試用期間の長さ(一般には3ヶ月とか6ヶ月)は本来当事者の合意に委ねられますが、試用期間中労働者は不安定な地位におかれることになりますから、期間の定めがないとか不当に長すぎる場合は、公序良俗ないし信義則違反として無効になることがあります。またその延長は就業規則などでその旨の規定が設けられていない限り認められません。また、就業規則に定めがあった場合でも、当然認められるわけではなく、特段の事情のある場合に限られています。

 

正式採用を拒否する場合は、試用者に対し正式採用拒否の意思表示を明確にしておく必要があります。この意思表示がないまま、試用期間が経過してしまうと、解約権留保期間が経過したことになりますから、試用者を正社員として扱わねばならなくなります。正式採用の拒否の合理的な理由としては、判例は、?勤務態度・勤務成績の不良、?業務不適確性、?経歴詐称、?誓約書等の必要書類不提出などがあります。

 

なお、試用期間中の者は、使用者が都道府県労働局長の許可を受ければ、最低賃金の適用から除外されることができますが(最低賃金法第8条)、許可事例はほとんどありません。