退職金制度は、法律上設けることを義務付けられたものではありませんので、退職金制度がなくても特に問題はありません。ただし、就業規則等に退職金支給に関する規定がある場合には、退職金は恩恵的な給付ではなく、労働基準法の賃金に該当することになります。
「退職金、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさないこと。但し、退職金、結婚手当金等であって労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件の明確なものはこの限りでないこと。」(昭和22.9.13基発17号)
したがって貴社においては、退職金規程に基づいて退職金を支給していますので、労働基準法上の賃金に該当することになります。
退職金に関しては、労働基準法第89条3号の2において、「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」を就業規則に記載しなければならないことになっています。そして、その減額や不支給事由を設ける場合には、退職手当の決定、計算及び支払の方法に関する事項に該当しますので、就業規則に記載しなければなりません。
したがって、退職金規程があるにもかかわらず対象者に支給しなかったり、減額に関する規定がないにもかかわらず退職金を減額して支給したりすることは、賃金支払いについて定められた労働基準法第24条違反となります。
裁判例でも、懲戒解雇した労働者への退職金を不支給としたケースにおいて、懲戒解雇における退職金の不支給規定がなく、さらに、そのような場合には退職金を支給しないという事実たる慣習が成立していなかったとして、退職金の支払が命じられています。(東北ツアーズ協同組合事件、平11.2.23東京地判)
『被告による退職金の支給について支給条件として懲戒解雇された従業員には退職金を支給しないという内容の付款を設けるのであれば、そのような内容の付款をあらかじめ就業規則において定めておくべきであるが、仮に就業規則にそのような付款が定められていなかったとしても、個々の労働契約においてそのような付款を設けることを合意することは当然に許されるものと解され、また、就業規則においてそのような付款を設けていなくとも、そのような付款が存在することを前提に退職金の支給に当たってはそのような付款が適用されるという事実たる慣習が成立しているものと認められる場合には、被告による退職金の支給について支給条件としてそのような付款が設けられていると認めることができる。』
ただし、退職金規定に不支給・減額規定があるからといって、必ずしも退職金の不支給・減額が認められるわけではありません。