貴社がパートタイム労働者を雇用する際に、労働時間を取り決めたのであれば、パートタイム労働者はその時間を超えて働く義務はありません。したがって残業や休日出勤をさせたいのであれば、労働者本人の同意が必要となります。
労働基準法上では労働時間を原則として休憩時間を除き1日8時間、1週間につき40時間と定めています。また休日については、毎週1日または4週間に4日と定めています。使用者がこの法定労働時間を超えて、または法定休日に労働者を労働させるには、労使協定(いわゆる三六協定)の締結と割増賃金の支払が必要となります。
パートタイム労働者の場合は、1日の労働時間や1週間の労働日数が短いため、残業により法定労働時間を超えたり法定休日の日数がなくなる場合は少ないかと思われますので、一般的には三六協定や割増賃金の支払いは不要になるでしょう。
だからといって、使用者がパートタイム労働者に対して、法定時間内であれば自由に残業を命じていいことにはなりません。使用者がパートタイム労働者に対して、残業や休日出勤を命じることは、労働条件を変更することになりますから、所定労働時間を超えて労働を命じることがある旨を、労働契約を結ぶ際決めておくか、あらかじめ就業規則に定めておかない限りは、労働者本人の同意が必要となります。
男性と女性の賃金格差が、客観的に仕事量の差から生じるのであれば違法ではありませんが、単に女性であるという理由だけで格差をつけているのならば、違法となります。
我が国では、女性労働者が男性労働者に比べ、社会的・経済的に低い地位におかれてきました。そのため労働基準法は、女性労働者の地位の向上を賃金の面から図る趣旨で「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」と定めています。この場合の賃金には、額のみならず、賃金体系、賃金形態も含まれます。
したがって、女性労働者が男性労働者と比較して、一般的に能率が悪いとか、勤務年数が短いからとかいった理由から同じ内容の仕事についている男性労働者よりも女性労働者の賃金を低くすることは、違法な取扱いとなります。ただし客観的な職務の能率、技能などを評価したうえでの賃金の差別は禁止されていません。
しかし、男女労働者の賃金格差が差別的取扱いか否かの判断は、実際はむずかしいケースが多いと思われますが、その賃金格差が、能率、技能などから生じたものであるかの証明は、使用者がしなければならないと考えられています。したがって、使用者は女性労働者から賃金格差について抗議を受けたような場合には、その賃金格差が生じる理由を説明する必要があります。
パートタイム労働者と一般従業員の労働条件が異なっている場合には、その異なっている部分について一般従業員の就業規則中に、パートタイム労働者に関する規定をもうけるか、パートタイム労働者の就業規則を別に作成する必要があります。
労働基準法では、一般従業員・パートタイム労働者・アルバイトの区別を問わず、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して遅滞なく労働基準監督署に届け出なければなりません。また、就業規則の内容を変更した場合にも届け出が必要となります。
就業規則においてその適用対象となる労働者を限定していない場合には、その就業規則はパートタイム労働者を含め、その事業場の労働者全員に適用されることになります。パートタイム労働者は、労働時間・賃金の面などで一般従業員と異なる取扱いを受けているのが一般的ですので、問題が生じる場合があります。
例えばパートタイム労働者を雇い入れる際に取り決めた、労働時間、賃金などの労働条件が、一般従業員の就業規則に定める労働条件の基準に達しない場合は無効とされ、無効となった部分は、一般従業員の就業規則に定める基準によることになります。
したがって、パートタイム労働者の労働条件が一般従業員と異なる取扱いをするのであれば、一般従業員の就業規則中にパートタイム労働者に対する特別の規定をもうけるか、別にパートタイム労働者の就業規則を作成しておく必要があります。